腹筋のトレーニングと聞いて思い浮ぶのは、子供の頃体育の授業でやった動きではないでしょうか。パートナーに足の上に乗ってもらった状態で、手を頭の後ろで組んで上半身を持ち上げるトレーニング…
種目の名前で言うと「シットアップ」の動きに近いのですが、何回も出来る子もいれば、全く上半身を持ち上げれない子もいました。
でも実は、その腹筋運動はお腹の筋肉である腹直筋を鍛えるためには、あまり効率的なトレーニングとは言えないんですね。それどころか、筋力が足りない場合は腰が痛くなる可能性がある動きなんです。腹筋を効果的に鍛えるためには、上半身を地面から持ち上げるような動作は必ずしも必要ではありません。
背中を地面に付けたままでも、十分腹筋を鍛えることは可能です。
そのためには、先ほど名前が出た腹直筋がどこにあり、どのように関節を動かしたら収縮する筋肉なのかを理解する事が大切なんですね。
腹筋に効かせる感覚はコツをつかめば誰でも簡単に意識できますので、そのための方法を順番に説明して行きたいと思います。
まずは腹筋を知ろう!腹直筋の形や大きさは?
腹筋に限らず、筋肉を鍛える時に最も大切なのが「鍛える部位を意識しながら行う」ことです。そのためには鍛えたい筋肉がどこにあって、どんな形をしているか理解することはとても大切です。
一般的に腹筋と言われている筋肉は、正式名称を「腹直筋(ふくちょくきん)」と言います。
よく腹筋が見えるお腹を「割れている」と言いますが、それは腹直筋の形から来ている表現なんですね。
腹直筋は骨盤の恥骨結合から始まり胸骨の下辺りに付いている筋肉で、お腹前面を覆うわりと面積の広い筋肉なのですが、上から下まで1枚の板のような形ではなく、いくつかの腱(腱画)で区切られた構造をしています。
ヒモで縛ったボンレスハムのようなイメージをすると分かりやすいかと思うのですが…ヒモに当たる腱の部分は筋肉がないため凹んでいて、ヒモの隙間からはみ出たハムに当たる筋肉の部分は盛り上がっています。
そのため腹直筋は誰でもポコポコとした形をしていて、お腹の皮下脂肪が薄い方はその膨らみが皮膚表面に現れます。その腹直筋が見えるお腹を、誰かが「腹筋が割れている」と表現したのが世間に広まったわけです。
ですので、腹筋を割りたい場合は皮下脂肪を出来るだけ薄くすことが必要で、そのためには食事制限や運動を取り入れたダイエットが効果的なんですね。
腹筋運動は腹筋の筋量を増やすという意味で「腹筋を割る」ことに対して効果的ですが、皮下脂肪を落とすための運動としては、消費カロリーが低いので決して効果的とは言えません。腹筋を割るためのアプローチとしては、消費カロリーを増やすためにもっと大きな筋肉を使ったトレーニングが効果的です。
短期間で効率的に腹筋を割る方法は簡単!でも体脂肪は早く減らない
腹直筋の働きと、効果的な鍛え方!
腹直筋(腹筋)は体幹部を屈曲させる動きで使われます。
と、言葉にすると分かりにくいかもしれないですね…
ボクサーがボディにパンチをもらった瞬間にお腹が丸まる形をイメージしてみてください。
それが今書いた体幹部を屈曲させる動きになります。
仰向けになった状態でそのお腹が丸まった体勢を作ると、腹筋にしっかりと力が入ってるのが触って分かるかと思います。
決して体を起こさなくても、ほんの少しお腹を地面に近付けるように丸めるだけですので、動きとしてはとても簡単ではないでしょうか。
このお腹を丸めるという動きが、腹筋を効果的に鍛えるためには必ず必要な動作になります。
冒頭に書いた、仰向けの状態から上半身を持ち上げるトレーニングが腹筋のトレーニングとして効率的とは言えない理由は、お腹を丸める動きよりも体を起こす動作に意識が行きやすいからなんです。上半身を持ち上げる時に、お腹を丸める動作も一緒に行えば腹筋も鍛えられますが、腹筋が弱い方の場合お腹を丸められないため、足の付け根の筋肉を使って上半身を持ち上げる動作になってしまいます。
ですので腹筋だけをしっかりと鍛えたい場合は、股関節は動かさないように、つまり上半身を起こさないようにして、腹筋が付いている骨盤と胸骨を近づけるように意識しながら、お腹を丸める動作だけを行うことが大切なんですね。
この骨盤と胸骨を近づける動きこそが、腹筋運動の最も重要なポイントになります。
腹筋を収縮させるための動きは、腹直筋の起始と停止である骨盤と胸骨を近づけることで、そのためには骨盤と胸骨を結んでいる背骨(腰椎)を丸めることが大切で、それを今回は「お腹を丸める」という言葉で表現しています。
お腹を丸めることで腹筋に効かせる感覚が身に付けば、どんな腹筋運動でも腹直筋に効かせられるようになります。そして、このお腹を丸めるだけの腹筋運動の最大のメリットは、どんなに腹筋が弱い方でも腹直筋に効かせることが出来るという点なんですね。
腹筋運動で腰痛が出る原因と予防法!
腹筋運動を行うと腰が痛くなることはありますか?
腹筋運動が苦手で、仰向けの状態から上半身を持ちあげる筋力が無い方の場合、無理に腹筋運動を行おうとすると腰が痛くなることがあります。
割合としては女性の方が多いと思うのですが、原因として考えらる主な理由は腹筋の筋力が足りてないか、腹筋が使えてないかのどちらか、あるいはその両方だと思います。
ちなみに、上半身を起こす腹筋運動の動作では、足の付け根にある腸腰筋が積極的に使われます。腹筋が弱かったり、上手に使えない方の場合、その腸腰筋に力が入るため腰が痛くなることがあるんですね。
腸腰筋は大腿骨から腰のあたりに繋がっている筋肉で、主に太ももを前に蹴りだすような動作で使われます。腸腰筋に力が入ると腰が反る方向に力が入るため、腰の筋肉が緊張して疲労が溜まり痛みが出てしまうわけです。
そんな腰痛を予防するためには上半身を起こさない腹筋運動がオススメで、お腹を丸める意識はとても効果的なんですが、より腰の負担を減らすために以下のポイントを意識して行っていただければと思います。
・膝を曲げて足の裏を地面に付く
・骨盤を後傾させる(お尻の穴を天井に向けるイメージ)
・頭を持ち上げあごを引く
・上半身全体を持ちあげようとしない
それぞれのポイントについて補足すると…
膝を曲げることで腰が反りにくくなると同時に、骨盤を後傾させることで腰椎がしっかりと地面に付き、より腰が反る動きを予防することができます。そして持ち上げるのは上半身全体ではなく胸から上だけで、腰を支点にして肩甲骨を地面から浮かすイメージでお腹を丸める動作を行います。
あごが上がると背筋が伸びやすくなりますので、頭を持ち上げてあごをしっかりと引いた状態を作り、首から腰にかけての背骨全体が1本の弧を描く形をイメージします。
手は頭の後ろに組んでも良いですし、前に出して太ももに添えてもOKです。前に出した方が手の重り分負荷が減るので腹筋運動は楽になりますが、頭の重さを支えるので首の前側の筋肉が疲れます。
頭の後ろで組めば頭を支えられるので首は楽になりますが、あまり強く手で頭を引っ張り過ぎると首の後ろ側の筋肉に負担がかかりますので、頭の重りを支える程度にしましょう。
腹筋運動で腰が痛くなる方は、ぜひこれらのポイントを意識しながらお腹を丸める動作を行ってみてください。
きっと10回程度行っただけでも、腰ではなく腹筋に効く感覚が分かるかと思います。
腹筋下部に利かせる簡単なコツとは!
ここまでの説明で腹筋が意識できた方は、きっと腹筋の上部、胃の辺りに効いた感覚があるかと思います。腹筋は骨盤から胸骨まで繋がっている筋肉ですが、腹筋の下半分にはあまり効いた感じはしないのではないでしょうか。
でもほんの少し動作の意識を変えるだけで、下っ腹に効く腹筋運動を行うことができます。
そのポイントは、ズバリ「骨盤」です!
先ほど腰痛を予防するためのポイントとして骨盤を後傾させると書きましたが、その骨盤の後傾を行うことで腹筋の下部に効かせる感覚を意識することが出来るんですね。
同じように膝を立てて仰向けに寝た状態で、今度は頭を地面に付けたままで骨盤の後傾だけを行ってみてください。その時に足を踏ん張ってしまうとお尻や太ももの裏側に力が入ってしまいますので、足には力を入れずお尻を地面に付けたまま行います。
もし足の脱力が難しい方は、太ももが地面と垂直になる位足を浮かして(膝は曲げたまま)骨盤の後傾を行ってみてください。そうすると、先ほどとは違い腹筋の下の方に力が入ってる感覚が意識できるかと思います。
このように腹筋運動は胸骨側(上半身)を丸めると腹筋上部、骨盤を後傾させると腹筋下部と、支点となる腰椎を中心に動かす部位を変えるだけで鍛える部位を変えることが出来るんですね。
腹筋下部の種目としては「レッグレイズ」が一般的ですが、ただ足を持ち上げるのではなく骨盤の後傾を意識することで、より効果的に腹筋下部を鍛えることができます。
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腹筋運動の回数や頻度について!
今回ご紹介した腹筋運動は、自重(自分の体重)を利用して行うトレーニングです。上半身や足の重さが負荷になるわけですね。ですので負荷の調節はありませんので、基本的には出来なくなる回数まで行うのが良いと思います。
その時に注意したいポイントは、反動をつけて行わないことです。
腹筋運動は可動域の狭いトレーニングですので、上げる時に反動を使ってしまうと勢いだけで動作が出来てしまいます。そうなるとどうしても腹筋への刺激は弱くなってしまいますので、「腹筋の収縮によって持ち上げる」という意識で行うようにしましょう。
上げる時に息を吐き切るように意識すると、腹直筋の内側にある筋肉も収縮させることが出来ます。そのように呼吸と動作を意識しながら、まずは10回3セットを目標に行ってみてください。
もし3セット目の10回が楽に感じるようになったら、1セットずつの回数を増やしていくと良いと思います。
腹筋運動を行う頻度にこれといった決まりはありませんが、筋肥大を目的に行う場合は週に1~2回ほど行えば十分です。
毎日行っても問題はありませんが筋肉の発達には休養も大切ですので、中2~3日は空ける方が個人的には効果的だと思います。
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もし週に3回以上行いたい場合は例えば日ごとに種目を変えるなどして、鍛える部位に変化をつけると良いのではないでしょうか。
腹筋運動の負荷を増やすための方法!
腹直筋の働きで書きましたが、腹筋はお腹を丸める時に収縮する筋肉です。
じゃあ逆に伸びるポイントはどこかというと、腰を反った状態なんですね。
実は平らな地面に仰向けになった状態で行う腹筋運動は、腹筋の可動域を全て使ってるわけではありません。
ですので、スタートポジションで腰が反った状態を作って腹筋運動を行うと、腹筋の可動域全体を使うことになり、その分負荷が増えるため腹筋運動の強度が高くなります。
こちら↓の商品はスタートポジションで腰が反った状態を作るための道具です。
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腹筋をストレッチするための理想的なラインを作れるように研究してあるんだとか…
あるいは腰の下に折り曲げた座布団や、厚みのあるクッションを敷いても腰が反った状態を作ることはできますね。
このように可動域を広げるだけで腹筋運動の負荷は格段に増えますので、平らな地面で行う腹筋運動が楽に感じる方は、負荷を増やす方法として試していただければと思います。
ただ、腰痛予防のポイントでも書いたように腰が反ることで腰痛を感じてしまう方は、まずは平らな地面でしっかりと腹筋を意識出来るようにしてから負荷を増やすようにしましょう。
最後に
腹筋運動は一見とても地味で簡単そうですが、筋肉の面積が広い上に関連する関節も多いため、バリエーションが多くとても奥が深いトレーニングなんですね。
でも、お腹を丸めるという基本動作さえマスターしてしまえば、どんな腹筋運動でも効果的に腹直筋に効かせることが出来ます。
そのための練習法としてこの記事がお役に立てれば幸いです。
最後までご覧頂いありがとうございました。